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ことのは「言葉」を集めてつくったブログです。
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悪い夢を見てた。


私は、私を抜け出し、眼だけとなり部屋にいる。
私はこの部屋を知っている。
半年ほど前に別れた人の部屋。

カレは眠っている。
静かに。幸せそうに。

私は、眼だけなのでそれを見ている。
じっと見ている。
見ていることしかできない。

 その手で新しい彼女の髪をなでているの?
 その声で優しい言葉をかけているの?

違う。
もう、何にも思っていない。
思っていないはずなのに。
紡がれていく私の思考。
叫びたい。
でも、眼だけの私は見ることしかできない。

カレの寝顔も、その部屋の空気もすごくリアルで、私は押しつぶされそうになる。

 仕事もうまくいってるんだってね。
 私が死ぬかもしれないっておびえているのに。
 あなたはいいね。
 あなたはいいね。

勝手に暴走する思考。
止められない。こわい。
叫びたい。
叫べない。
助けて!助けて!!

私は眼を閉じる。


・・・そこで眼が覚める。

幸せになってね。
私は別れるときにそう言った。
半年たって、もう大丈夫だと思っていた。
大丈夫じゃない。
全然大丈夫じゃない。

いつの間にか泣いている自分に驚きながら、それでも私は泣き続けた。

たぶん、この世で一番怖いのは自分自身なのだ。
そのことに気づいた春の日。
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それはとても暑い日のことだった。
教室の中は34人の熱気でじめじめと熱く、教室の上の方にとりつけられた扇風機がぬるい空気を
かき回していた。
先生の声が近くに聞こえたり遠くに聞こえたりするようで、ミリカは頭を軽く振る。

「考え方はいろいろあるけれども、答えは結局一つになるよね。」
先生の声も心なしかいつもの元気がないようだ。


黒板に浮かぶ白い三角形や四角形。
(算数、きらいじゃないんだけどな。)
でも、集中できない。
脳みそが溶けてしまいそうだ。


ふと斜め後ろの高原くんを盗み見る。
高原くんは涼しげな顔をして黒板を見ている。

2週間前に転校してきた高原くん。
なかなか話しかける機会もなくて、ずっとそのままになってたけど。
昨日、はじめて話をした。
「教科書見せてもらっても良い?」
高原くんの声は大人っぽくて、クラスの他の男子と全然違ってた。

北国からひっこしてきた高原くん。

教室中が熱帯と化している中で、一人涼しげな顔をしている高原くん。

(まるで一人だけ冷たい水の中にいるみたい。)
ミリカはもう一度そっとそちらの方を見る。
真剣な眼。まっすぐなまなざし。
大人っぽい横顔。


ふっと高原くんの視線が揺れて、ミリカの視線と・・・
ぶつかった。
慌てて眼をそらすミリカ。
(しまった、見過ぎた!!)

思わず顔を伏せるミリカの耳に確かに聞こえたのは波の音。
寄せては返すあの水の音。
(何で海の音??)
眼を閉じるとキラキラと光る海がまぶたにうつる。
(波打ち際に見えるのは誰?)


「じゃあ、下野さんこの問題といてくれる?」
先生のその声に海はたちまち消え、ミリカは熱い教室に引き戻される。
(わ、わからない・・・)

青い空、白い雲。
みんなの笑い声。

夏はもうすぐそこ。
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